ニュースの概要
文部科学省の調査をもとに、大学生が部活動やサークルから距離を置く傾向が強まっているのではないか、と朝日新聞が報じました。背景として挙げられているのが、就職活動の面接で問われる「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」の存在です。学生は、集団活動に時間を割くよりも、インターンシップ、アルバイト、資格取得など、成果を言葉にしやすい経験を優先しているとみられます。かつて学生生活の中心だった課外活動が、就活の準備という物差しで選別される時代に入ったことを示す調査結果といえます。
引用元: 大学生は部活・サークル離れ? 就活「ガクチカ」優先か 文科省調査(朝日新聞)
分析・見解
部活離れは「やる気の低下」ではなく「投資先の変更」
部活やサークルに入らない学生を、意欲が低いと見るのは早計である。多くの学生は、限られた四年間の時間を何に使えば将来の選択肢が広がるかを、かなり冷静に計算している。
授業の課題、アルバイト、奨学金の返済見通し、インターンの応募。これらを並べると、週に三日も四日も拘束される活動は重い。時間単価で考える世代にとって、部活は「費用対効果が読みにくい投資」に映る。
ガクチカという言葉が、経験の価値を狭めている
ガクチカは本来、人柄や行動の特徴を知るための質問にすぎない。ところが就活の現場では、いつの間にか「語れる成果」を持っているかどうかの競争になった。
部活で全国大会に出た話、サークルの代表として人数を二倍にした話。こうした分かりやすい物語は強い。だが、その物語を作るために活動を選ぶという逆転が起きている。経験が先で語りが後のはずが、語りを先に決めて経験を探す学生が増えた。
ここに皮肉がある。成果を求めて入った活動は、成果が出なければ途中でやめやすい。結果として、泥くさい人間関係の調整や失敗から学ぶ機会は減る。
別の場所で「語れる経験」を買う動きが広がる
部活が減れば、その穴を埋める市場が育つ。長期インターンの紹介サービス、学生向けのコンテスト、有料の課題解決プログラムなどがその例である。企業が学生を早く囲い込みたい事情とも噛み合う。
見方を変えると、大学の課外活動が担っていた「失敗してもよい練習の場」を、就活産業が有料の商品として肩代わりしているともいえる。参加できるかどうかが家庭の経済力や住む地域で分かれれば、新しい格差につながる。
採用側の評価が変わらない限り流れは止まらない
学生の行動は、採用側の評価に対する合理的な反応である。面接官が今も「リーダー経験」「数字で語れる成果」を高く評価するなら、学生はそれに合わせて動く。
逆に、面接で「うまくいかなかった経験から何を学んだか」を丁寧に聞く企業が増えれば、物語を飾る必要は薄れる。部活離れを嘆く前に、評価の側を点検することが先である。
ビジネスへの影響
採用面接の質問を変えると、応募者の本音が見える
採用担当者にとって、ガクチカ頼みの選考は見分けがつきにくいという弱点がある。語りの上手な学生ほど高く評価され、実際の仕事ぶりとずれる危険がある。
対策は難しくない。「その活動を選んだ理由」「やめたくなった場面」「周囲とぶつかったときの対応」を深掘りする質問に変える。経験の大小ではなく、判断と行動の過程を評価する。結果として、部活未経験の学生や、家計のためにアルバイト中心だった学生も正当に比較できる。
学生に近い接点を、育成の入口として設計する
学生が時間を投資する先を探している以上、企業側から短期の実務体験を用意する余地は大きい。ただし、単なる採用の囲い込みにならないよう、報酬や学びの中身を明示することが信頼につながる。
大学や地域団体と組み、週一回程度の軽い参加形式の課題解決プロジェクトを設けるのも一案である。拘束が軽ければ、アルバイトを抱える学生も参加しやすい。
入社後の人間関係づくりは、会社が引き受ける前提で考える
部活やサークルで鍛えられた調整力や組織への慣れは、今後の新入社員では当たり前ではなくなる。その分、配属後の面談頻度を増やす、先輩との一対一の場を設けるなど、関係づくりを仕組みにしておく必要がある。学生時代の経験に頼らない育成設計が、これからの標準になる。
