ニュースの概要
ミスミグループは2026年11月から、高校卒業者と大学卒業者を学歴で分けず、同じ枠と同じ待遇で迎える新制度を始めました。名称は「若手ポテンシャル採用」です。対象は高校生、大学生、そして就業経験がおおむね3年以内の人です。初任給は一律30万3,000円で、手当や福利厚生も共通になります。これまでの春一括採用は見直され、応募は通年で受け付けます。2027年4月以降は、入社時期を年4回から選べるようになります。学歴という入口の線引きをやめ、本人の可能性で採る方向へ舵を切った形です。
引用元: ミスミグループ、高卒・大卒の初任給を統一し学歴別採用を見直し(SBS News)
分析・見解
学歴で給与を分ける慣行に、大手が正面から踏み込んだ
日本の多くの企業では、初任給は学歴ごとに段階を設けています。高卒、短大卒、大卒、修士卒と並べ、少しずつ金額を上げる形が一般的です。ミスミはこの階段をなくし、全員を30万3,000円にそろえました。
高卒の初任給は、全国平均でおおむね18万円前後です。それと比べると、大幅に高い水準といえます。大卒の平均とくらべても上位に入ります。つまり今回の統一は、高卒側の底上げという性格が強い制度です。
入社時期を年4回に増やす狙いは、取りこぼしを減らすこと
春に一括で採る方式は、企業にとって管理しやすい仕組みです。一方で、春を逃した人は次の年まで待つことになります。就業経験3年以内の人を対象に入れたのは、この取りこぼしを減らすためでしょう。
外資系企業や一部のIT企業は、すでに通年採用を広げています。製造業の大手でも、中途と新卒の境目をあいまいにする動きが出ています。ミスミのように部品の流通と製造を手がける企業は、現場の知識を持つ若手を早く育てたいはずです。入社時期の選択肢が増えれば、その分だけ早く戦力にできます。
若手の取り合いが、制度の設計を変え始めている
少子化で、新たに働き始める人の数は減り続けています。高校の求人倍率は高止まりしており、地元の中小企業は特に苦戦しています。大手が高卒にも大卒並みの給与を示せば、地方の高校生の選択肢は一気に広がります。
別の見方もできます。学歴で枠を分けないことは、入社後の配属や昇進の道を、学歴ではなく仕事ぶりで決めるという宣言でもあります。給与だけをそろえても、その後の出世で差がつけば意味が薄れます。ここが制度の本当の試金石です。
制度が定着するかは、入社後の育成設計にかかっている
同じ待遇で入っても、高校で学んだ内容と大学で学んだ内容は同じではありません。基礎知識の差を放置すると、現場で不満が出ます。研修を共通にするのか、足りない部分を個別に補うのか。この設計が甘いと、統一の看板だけが残ります。
過去にも、学歴不問を掲げながら実態は変わらなかった例はあります。今回の価値は、数字で処遇を示した点にあります。曖昧な理念ではなく、金額で約束したため、外から検証しやすいのです。数年後に、昇進や定着率のデータが出るかどうかが、次の注目点です。
ビジネスへの影響
初任給の見直しは、採用だけでなく社内の給与体系に響く
ミスミの動きを見て、自社でも学歴別の初任給を見直すべきか悩む経営者は多いでしょう。ただし、初任給だけを変えると、既存の若手社員との間にゆがみが生まれます。入社2年目の大卒社員が、新入社員と同額になる事態も起こり得ます。
まず、現在の給与表のどこに差があるのかを一覧にしてください。次に、新卒と在籍者の差を何年で埋めるのかを決めます。全体の人件費に与える影響は、人数が少ない会社ほど試算しやすく、先に数字を出しておくと判断が早くなります。
通年採用は、応募者対応の仕組みを先に整えてから
年4回の入社を受け入れるには、研修を年に何度も回す必要があります。研修担当が少ない会社では負担が重くなります。最初は年2回から始め、動画教材などで共通部分を録画しておくと、運用が楽になります。
応募の窓口も通年で開けておく必要があります。選考日程を固定せず、応募から2週間以内に返事をするなど、速さを売りにする方法もあります。大手と同じ土俵で給与を競えない中小企業にとって、返答の速さと、入社後の成長の見通しを具体的に示すことが、有効な差別化になります。
学歴を問わない採用は、すぐにまねできる施策ではありません。しかし、検討を始める価値はあります。まずは職種を1つ選び、学歴不問の試験運用から始めるのが現実的です。
